密航留学生たちの明治維新


 「密航留学生たちの明治維新 井上馨と幕末藩士」 犬塚 孝明
           NHKブックス                1071円 



 タイトル長ぇよ…っ。
 てのは置いといて、井上馨(聞多)を主軸にいわゆる「長州ファイブ」の面々がいる。
 小説ではないが大変読みやすい。


 西欧に渡ってからそれぞれが何処へ寄宿しどの大学で何を専攻したか、など細かい。
 聞多主軸と言ったが俊輔と帰国してしまった後の残留組の動向もさらりとあるし満足。





 何よりも驚いたのがロンドンでは薩長それぞれの留学生が既に親しく接し、助け合って
 いたこと。日本では敵対したり同盟したりと忙しない時期だったのにさすが世界!
 長州ファイブと同時期に渡欧した薩摩の留学生は五代才輔など19名。
 しかもこちらは快適な船旅ライフ。この辺り薩摩という藩の偉大さが伺える。





 この頃から日本留学生たちのステイ先として定番になったのが「クーパー邸」
 山尾庸三が泊まっていたが、後に色んな留学生が来たらしい。
 その中で最もヒットしたのが馬場辰猪。ここ読んだ時叫びそうなくらい嬉しかった。
 だって、こんなところで馬場の名前にお目にかかれるとは思いもよらなかったので。





 起動修正して幕末へ。
 自分にとっては幾つも新知識があった本なのですが、高杉についても新知識が!
 慶応元年3月、回天義挙の後自分が行けない代わりに、義弟の南貞助に聞多から
 英語を学ばせ、グラバーの船に乗せてイギリスへ送ったという。藩承認で。
 (ちなみに南貞助はイギリス女性と結婚。日本が認めた国際結婚第一号。)
 まー、確かにあの時期高杉に抜けられても困ったろうしな。でも高杉が渡欧してたら
 トンデモなエピソードがごまんと出来ただろうに、惜しい。




 あ、ただしこの本での高杉は大変理知的。
 高杉本じゃないので派手な部分はなく、長州ファイブの英国留学に際しての
 派遣人材登用について、長嶺内蔵太へ真っ当な意見具申していたりとバック
 アップ役を見事に努めてる。
 こんな高杉もたまにはいいよね。


 ってかこれ聞多の本だってば。