「敗者たちの幕末維新」   武光 誠
   PHP文庫       539円



 幕末が舞台の研究本、というより紹介本。
 副題に「徳川を支えた13人の戦い」とある通り、幕閣達の
 憂国の心と苦難の舞台を書いた一冊。



 ごく薄い本に13編入ってることでも分かるけど、一人一人の
 活躍は極めて浅く軽く触れているだけです。
 かなり名前の売れている方々がラインナップされてるので
 それ程幕末オタクではなくても「そんなん知ってるよ」的な
 気分になるかと思われます。
 阿部正弘とか井伊直弼とか小栗忠順とか勝海舟とか山岡鉄舟とか。


 今注目の篤姫も一編含まれてます。幕末の混乱した大奥の様子が
 ちらりと垣間見られる。女性は他に和宮
 和宮と家茂はほのぼの夫婦というイメージで好ましいですよね。



 この時代の幕閣側は実に秀才揃いのエリート集団。
 戊辰戦争で前線に立った将達もぱきぱきのエリートでしたが、
 政治家の方たちもいっそ倒幕側より優秀で柔軟だったんじゃ
 なかろうかと思ってしまう事もあります。
 それでも函館組や山川など局所を除いて見ると倒幕寄りなので
 「いや長州だって土佐だって肥前だって!」と考え直します。



 一番好きだったのは松平容保の項。
 慶喜の大阪から開陽丸に乗っての敗走のシーンは容保達の
 引き摺られ振りだけでも立ち読みしてみてはどうでしょうか。