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酔って候<新装版> 司馬 遼太郎
文春文庫 514円
志士がメインの幕末にあって賢公と言えた藩主4名の本。
幕末の藩主と言えば個人的には島津や毛利より会津が出て
くるのだけど、まぁ彼は色んな意味で別枠として。
「酔って候」・土佐藩主・山内容堂
「きつね馬」・薩摩藩父・島津久光
「伊達の黒船」・宇和島藩主・伊達宗城
「肥前の妖怪」・佐賀藩主・鍋島閑叟
全員有名ですが、敢えて言えば伊達宗城の知名度がやや劣るかな。
と言っても幕末の4賢公の1人なのでやる事はやっている。
倒幕活動以前から中央に乗り出していた為、安政の大獄で松平春嶽
や山内容堂らと同じく隠居させられている。
まぁ倒幕前後には復活してるのだけど、でもやっぱり派手さはない
気がする。派手っつーか灰汁の強さで言えば鍋島公が1番だと思う。
読み物としても4つのうちで1番面白かった。
この人の方針がもうちょっと対外に向けて友好的であったら明治
以後の肥前陣のあり方も違ったんじゃないだろうか。
せっかくの軍事力なのに土佐より更に遅い参戦は如何かと。
空論を馬鹿にして実践力重視で当時随一の技術力を身につけて
アームストロング砲まで生産した割には影が薄い。
二重鎖国とはよく言ったもんだ。
幕末の流れを知ってからのがより楽しめるし納得できる一冊。
でもやはり司馬先生なので単なる時代小説としても面白い。
にしても、賢公と言われた人たちは共通して商業・経済重視だった
んだとよく分かる。現代なら結構誰でも身についてる経済感覚が
当時では明暗分けるくらいの差を生んだんだな、と今更実感。