高杉晋作―天翔ける若鷲」   南條 範夫
   PHP文庫       450円



 性懲りもなく高杉本。
 入塾から始まるのだけど、南條先生はかの有名な「城下の少年」の著者。
 もう高杉の明倫館時代は書ききった…!というところだろうか。
 先にアレを読んでると不安になるが、本作では高杉乙女化現象はなし。



 南條先生の高杉エピはそこここに司馬先生の影を感じる。
 井上とのやり取りやまさやうのの在り方が似ている…気のせい?
 特筆なのは周布との仲のよさ。


 「何度も喧嘩を吹っ掛けたが、腹の底では"この人がいる限り防長は
  大丈夫"とひそかに敬意を払っていた人である」


 高杉にここまで思われた人なんて周布ぐらいじゃないか。
 桂さんは「この人がいてくれたら大丈夫」じゃなくて「この人が
 いてくんないと維新完遂は無理!」という不可欠度が別次元。
 ホントにそう思ってる。高杉は破壊の後の建設には向いてないって
 のはきっと万人が認めてくれると思うのだけど、向いてる云々以前に
 本人が権力を握る椅子に座らなくちゃ建設は為せないので。


 そういえば高杉が生き残ってたら廃藩置県はどうなっただろうか。
 毛利親子が無事ならなんでも良かったのか、でも防長割拠で長州を
 壊すのはアリでもゆっくり腐らせるなんてやり方はナシかもしんない。




 超・脱線!
 本作に戻ると、久坂がらみの部分だけは乙女高杉が現れる。
 甘酸っぱい少年時代の一コマ…、を思い出して苦笑する高杉。キモい!
 ただし人前での余裕綽々な高杉節は高杉本でも3本の指に入りそう。
 小倉戦辺りでは何を言っても「高杉さんが言うのなら…!」みたいな
 長州兵が見られる。



 ところで「高杉晋作」というタイトルの本がやたら本棚で目に付く。
 メインタイトルが「高杉晋作」な本をちょっと書き出すと。
 池宮彰一郎・三好徹・古川薫・山岡荘八・一坂太郎・富成博・童門冬二
 南條範夫奈良本辰也・野中 信二・村上元三尾崎士郎・八尋舜右
 ってキリがない。まだ感想書いてないのもあるなぁ。


 これでもまだ浜野卓也穂積驚や八切 止夫は未読だし、タイトルが
 「高杉晋作」じゃない高杉本も多い。マイ・ディアシンサクとか
 司馬先生のとか松陰先生や竜馬とのコラボ本とか。



 対抗馬は土方くらい。こっちはこっちでキリがない。
 野山獄で3ヶ月くらい読書に耽ってみたい!