幕末 狂を生きる」  奈良本 辰也
  徳間書店       336円



 高杉・白井小助・坂本龍馬を題にした3編収録。
 何より惹かれるのは第一章「地獄へのインタビュー」。
 地獄にいる高杉に著者が現世から出向いてあれこれインタビューを
 するというもう企画勝ち!な1本。



 既に絶版されている古い本(昭和59年発行)なので情報的には
 え?というところもあるけど、まぁこんな話は後にも先にもこれきり
 でしょうから一度読んでみるといいかも。
 高杉の実績と長州藩の動向を追いながらの茶々入れ、といった感が
 強くなっていて、高杉がやや「訳知り顔」し過ぎているのが残念。


 著者の奈良本先生は幕末・長州に関しちゃ第一級の方なので、
 やはり文体などは原則的にカタイ。インタビューという言葉に
 惹かれすぎると期待を外されるが、ところどころ奔放な闊達さを
 表す高杉はいいかもしんない。つーかすごい酒好きになってる。



 白井小助にスポットを当てたのは珍しくていいとは思うし、結構
 非業な第二奇兵隊を詳しく取り上げているのは価値アリだけど、
 面子的にこれはどうかと…。高杉と坂本の間が白井小助って…。


 その坂本は薩長同盟前後のみに絞って書かれていて、これが一番
 通常の小説的だと思われる。勝のことが大好きだな坂本って、と
 これだけ見ると思える。
 図書館か古本屋でどうぞ。