「蜜蜂のデザート
 グルメミステリ第2弾。
 このシリーズは本当に食と密接なので無条件でわくわくする。
 こんなうまくいくのか、という感染経路ですがちょっとゾっと
 するな。傷口膿ませて生クリームに浸して繁殖させて食わせる。
 「告白」の教師の仕返しと通じるものがあります。
 これを看破する過程は面白いけどミステリとしてはご都合主義
 がありすぎるかな。人を呪わば穴二つって感じのお話。




 「草祭」 恒川 光太郎
 化け物が住むと言われる野原「美園」と周辺の街を舞台にした連作集。
 どの1編も不思議な謎や余韻を残し、他の話へ薄ーくつながっていたり
 する好みのつくりでした。
 踏み込んだ者も化け物になってしまうよと囁かれる彼岸「美園」
 柔らかで静かな描写は恐怖より物悲しさが漂う。




 「スナッチ」 西澤 保彦
 ある日起きたら53歳になっていた22歳の青年の話。
 とりあえず設定はキャッチーで手を出しやすい本だと思います。
 このショックと恐怖は想像もつかないものがありますが、今作では
 どちらかと言うとその恐怖ではなく、見失った30年を追いかける
 ちょっと切ないお話。奥さんがとても愛されてる。




 「黒百合」 多島 斗志之
 少年たちの一夏の不思議ミステリ。
 舞台は昭和27年。でも最終的に絡むのはもっと昔の話。
 不可思議な少女と出会って田舎でちょっとした冒険。
 でも途中まで流れる青春小説的な雰囲気はラストで消されます。
 複雑な人間模様の解説訳(探偵役)がいないので自力で
 整理してかないといけませんが、十分楽しく読めました。




 「完全恋愛」 牧 薩次
 何十年にも渡る愛に起因する完全犯罪。
 凶器消失・アリバイなど複数のトリックを重ねた3つの犯罪。
 恋愛小説としても読める叙情的な文章。戦中から現代まで貫かれた
 のは誰の愛だったか。年数に比して登場人物が少なめなので、それ
 だけ心理描写が深い。
 目新しいトリックではなくても読み込ませる本でした。