「非正規レジスタンス」  石田 衣良



 IWGPシリーズ
 よく言われるように確かにテーマが深刻です。ネット難民・ネット強請・未婚の母。
 初期みたく「現代の若者間の問題」から「社会全体の問題」になっている。
 しかもこのシリーズはテーマの該当者の人も多く読者に抱えてそうだし。
 低所得者の諦めと嘆きと足掻きを描いてるのでさすがのマコトもスカッと爽快な
 展開と解決には至らないですが、逆に高所得者も単純に幸せ!という生活は
 送っていないあたりが石田衣良だなぁ、と思えます。
 マンネリと言えばマンネリな展開とも言えちゃう。けどマコト一人称の文体はやっぱ
 読んで損ナシ!と充分に感じさせてくれると思います。
 (タカシの出張り方が一番マンネリかな…)
 



朝に咲くまでそこにいて」 遠野りりこ



 山本文緒の推薦が付いてたのがものっそい納得できる。
 同系列のお話です。現実に迷い逃避したくても許されない女性の苦悩。
 王子様ではない現実の男に対する執着じみた恋愛と甘くない日々。
 山本文緒より直接的な下卑た描写も躊躇なく書かれるが主人公設定の
 ためかな。20代後半から30代の行き詰まりを感じてる女性には痛切に
 訴えるものがあるようです。




光車よ、まわれ!」  天沢退二郎



 ジャケ読みです。好き絵師様の一人、スカイエマさんの装丁だったので。
 戦うこどもたち、という煽りにスカイクロラを思いましたが当然全く
 違って、現代が舞台の典型的な巻き込まれファンタジー
 30年以上前の作品とは思えない程、予想以上に楽しめました。
 ある日急に妖怪みたいな化け物が見えてしまった主人公と秘密持ちの
 美少女が手を取り合って謎解明と化け物退治に取り組みます。
 エマさんの表紙絵のまま頭ん中で物語が展開されていたのでやたらと
 ノスタルジックさ強調されました。




カイシャデイズ」 山本 幸久



 内装会社のさえたりさえなかったりするリーマン達の日常。
 楽しいばかりではない仕事と会社。でも結局家族より長く過ごす
 職場で何がしか些細で愉快でイイ事はあるものだと思えちゃう。
 新人くんは現代ッ子らしさがあるし熱血中堅主任や古株社員も
 いるよなぁ、と感情移入しやすいんじゃないでしょうか。
 文章もとても読みやすくてノれます。男性の会社員の方のがきっと
 面白く読めるんだろうなぁと口惜しいところ。




 「おそろし」  宮部 みゆき



 作家買いですが外したと思った事はない。ので今回も例に漏れず。
 時代モノの連作で百物語を主題にしたシリーズになる予定の作品。
 読者レビューのみならず幾つもの雑誌でご本人のインタビューが掲載されて
 いるので、本作を読む前から読んだ気になりそうですが、それでも一読をお勧め。
 上手いなぁと手放しに称えちゃうのは「宮部作品」というフィルターがあるのかな。