家守綺譚」 梨木 果歩
 「西の魔女が死んだ」が話題の梨木さんですね。
 ↑はタイトル買いで発売当時読んで、イギリスだのアイルランド
 だのが今と変わらず好きだったので人にも勧めたのですが、その
 時は一蹴されました(笑)でも正直これを映像化ってどうすんだろ
 と初めは謎に思ったのですがどうにか出来るもんなんですね。
 今回読んだのは「家守」。「西の〜」から一辺して和風怪奇系。
 だからといっておどろおどろしさはないですよ。
 やはり長野まゆみにやや近いような気がします。言葉の選び方が
 とても慎重で、それも意味的というより字面や響き的で。
 貧乏学生くんが叔母の家を預かる事になるのですが、そこでは
 さすが古い家。様々に彼を悩ます不思議現象がおきます。
 でもホラーではなくきたんという言葉からイメージできる通りです。
 最近では綾辻先生のこういうの読みましたが近い系統…かな。



旧怪談」 京極 夏彦
 耳袋って昔の噂話を集めた話集の怪談系を集めたもの。
 何て解説今更ですね。京極夏彦です。
 一本一本がせいぜい4ページ程度の、マジで世間話の合間の噂でオチや
 種明かしのないものばかりです。
 が、こういう民話系は好みなんでさくさく読めました。
 先頃読んだ綾辻行人の深泥綺談に似てる。
 更に、「ただいま」「ぼろぼろ」など幾つかはアイルランドの妖精の
 チェンジリングの話に似ていたりもして、こういう民間伝承の物語に
 共通項が多いのは人間が恐怖や畏怖を覚えるものが漠然としてても同じ
 だからかなとかまぁ色々ととても自分の民俗学的知識じゃ解き明かせ
 ない事を思ってみたりします。



夜の桃」 石田 衣良
 金も力も女も自由な超勝ち組な男が不思議系な女の子と出会ってハマる。
 地獄への角を曲がったかのようにまっさかさまに恋に落ちるのは悲劇的
 でも背徳的な悦楽と抗えない幸福感があって…ていう石田衣良には結構
 珍しくない設定と流れ。でも何故かこれは苦手でした……。
 同じような女の子の魅力を語っちゃう恋する男の話でも東京DOLLは
 好きだったんだけど。親指の恋人もすごく印象的だったんだけど。
 何故か今作の運命の女性語りには感銘を受けませんでした。
 美丘も平気だったのにな。我ながら集中出来ない作で不思議です。



2022年の影」  赤井 三尋
 進化しすぎたAIの人類への叛乱。
 ハリウッドではよくあるありふれた設定ですが、それを打開するのが
 高僧と少女の意識、という部分で一味違うハードさの和らいだ作品。
 取材力の高い本は好きなので説明部分の描写も楽しめました。
 世界の鍵を握る少女、という平々凡々な人物なのに、あどけなさに
 魅力を感じるキャラクターに仕上がっていたと思います。



グリム童話の世界」  高橋 義人
 グリムの残酷さを語る物語、ではなくグリム童話の代表作を編纂の
 過程での改訂や編纂者の意図をとても客観的に分析してます。
 といっても堅苦しい文章では全くないし、グリムやペローに拘って
 いるのではなくあくまで各物語が主役。なのでとても読みやすい。
 「いばら姫」と「眠りの森の美女」の比較の章が一番印象的だった。
 白雪姫やシンデレラのバリエーションや民話に多い「細部が異なる
 似た物語」も数多く紹介されていて、入門としてもある程度詳しい
 方にもお勧めの一冊。