■
「伊庭八郎」 野村 敏雄
PHP文庫 649円
主人公・伊庭八郎。
イバ八はまんまなタイトルの本が何冊かあるので
どなたのが既読でどれが未読か判らなくなる。
「幕末遊撃隊」よりも人間味溢れ、年齢に相応しい心内を語ってくれる。
こちらでは本山・人見もしっかり登場・活躍してくれて嬉しい。
箱根戦にページを割いてくれているので伊庭と人見の行動がよく分かる。
本山と中根叔、忠内次郎三と言う江戸からの長い付き合いである三人を
とーっても大切にしている伊庭が友情至上の男子高校生みたいで可愛い。
(個別で言えばおっさんもいますが)
利発で簡単に人を恨まない性格、というのはもうどの本見ても同じ。
嫌なヤツに描かれる事って今までにあったのだろうか。
ところでこの本の特徴なのが伊庭の追っかけ「諏訪準之助」
元は伊庭の同僚なのが初めてまともに交した会話で立て続けに「好きです」
という言葉を四回使うツワモノ(剣が、という意味)。
伊庭の剣に惚れ過ぎて「真剣勝負してみたい」から「人を殺すとこがみたい」
になり最後には「命がけで慕ってきたのに片腕失くすとは」とキレてくれる。
まさにストーカー。だって箱館まで追いかけてきたし。
好きなら好きで本山のポジションを狙えば良かったのに、と言わずにいられない。
そうそうここでも伊庭と小稲は仲良しさん。小稲は賢くデキた女。
「会いてぇなぁ、ちきしょうッ」って嫉妬も起きない両想いっぷりに拍手。
たった一つの不満。装丁が…っ!!