ブラック会社に勤めてるんだがもう俺は駄目かもしれない」 黒井 勇人
 ネットで読んでいたので買おうとは思わなかったです。
 でも面白いよね、さすが。蛇の道は蛇というか…たまにある絶妙な
 レスがツボると笑ってしまう。同業の方ならこの数十倍は楽しい
 のだろうけど。



カルトの島」 目黒 条
 いきなり全日本人に新興宗教団体への所属命令が下された。
 所属しなければあからさまな落伍者の印は免れない情勢の中、
 ぼんやりとOLをしてきた女やエリート団体へちゃっかり
 入ってしまった愚痴仲間だった筈の友人。チャラいくせに
 要領よくエリートへの道をいった弟。そんな面々の中で
 何を思うか。
 これは一章目の話で、同じ設定でいくつもの連作になってます。
 団体に入ることにとにかく反発し、軽蔑されながら生きる道を
 選ぼうとする人も、上手くキャリアを生かし高層ビルで守られて
 生きる人も、みんな様々な考えと状況判断なんですね。
 でもそう思わせないどこかとち狂った登場人物の思考がさすが
 「カルトの島」です。タイトルに恥じない。あまり深くのめり
 こまず軽く読んでくのが吉かな、と。



ブルーベリー」  重松 清
 端的に言うと人生で出逢った女性達との別れ。
 恋愛的な意味ではなく、友人であったりちょっとした近所の人
 であったり。様々な出会いと分かれを繰り返して、「今頃は
 あの人何してるかな」と思い出しもしないくらいの出会いすら
 丁寧に書いたような一冊だったと感じます。
 そんな刹那のバッティングの中でもほんの少しずつ確かに残された
 ものがあって、この主人公にとってはそれがブルーベリーだった。
 大きな事件や深い谷や暗い迷路に疲れたら手にとりたい一冊。



マック恋愛」 由香
 ケータイ小説です。タイトルからして分かりますね。
 マックで働き出した女の子が先輩のあの人に恋しちゃう!
 そんなお話。読んで損した気分にもなりますよそりゃ…。
 でもマックってついてる以上マック内部でのオペレーションとか
 上下関係とかそういうのをもっと詳しくサブ的でもいいから載せて
 くれるのかと期待しちゃってたんです…。
 表紙は可愛いですけどね。ピンクピンクで。



りすん」 諏訪 哲史
 珍妙な兄妹の会話文のみで一冊構成。
 厳密には親とか医者とかも話しますが全部かぎカッコ文。凄い。
 入院の長い妹の下へ毎日通ってくる兄。二人の会話はどこの
 禅門答かというくらいもって回ったツーカーの世界で成り立って
 ますが、こういう二人完結してる話をちゃんと読み手に対する
 エンターテイメントにしてしまうのはなかなか尊敬です。
 そこからちまちまと事件らしくもないが事件がおきます。
 同質の女性が盗み聞きして本にしてんじゃないか、と。
 中盤から後にかけては叙述トリックじみてきて視点も入れ替わるし
 夢か現か、という世界に突入してしまうのですが、個人的にはそれ
 までのややシュールながらも常に病気の妹への対応ではなくあくまで
 仲の良い妹への接し方を当然の如くする兄が素敵でした。



ももこの21世紀日記
 この人は「○○の○○○」3部作がピークだったと思います。
 かーなーり古い話ですが、その後もさくらももこのエッセイは
 何故か欠かさず読んでいるので改めて新作でるたびに思う。
 ももの缶づめとか猿の腰かけとか、腹筋痛めるくらい笑ったのに。
 生活環境の差なのか段々愚痴めいた批判的な意見が多くなって
 しまっていったのがとても残念。
 今回もまぁ「日記」とタイトルについてるのだから文句言っちゃ
 いけないのでしょうが、ほんと「日記」っすね。夏休みレベル。
 文字も大きく文字間広くはわざとだとしても内容も何だか繰り返し
 がおおいし。ああ、でもこの人の出産奮闘気みたいのと鉱石図鑑
 はなかなか好きです。もう少し趣向を変えて書いてくれたらまだ
 まだファンになるんだけどな…。