「心霊探偵八雲(1) 赤い瞳は知っている」 神永 学
 美形・無気力・無頓着でも実は情に脆い。
 このテの探偵は結構いますが、その中でも八雲はドラマ化も
 されてますしメジャー級だと思います。
 の割には名前だけ知ってて読んだ事はありませんでした。
 ソフトカバー単行本の時はそこまで読もうと思わなかった。
 今回の文庫化に当たっては表紙にやられました。
 単行本の絵より漫画化の絵よりツボりました。
 鈴木康士さんの八雲が鼻血ものです。マジで。
 これに釣られて読んだけど、一作目だからかここまで話題に
 なる程のミステリかなぁ…と。上等のラノベって感じです。
 設定がちょっと浅いんですが、これは先に進むにつれて深み
 が増して八雲のキャラもいい感じになってくんだと期待します。
 「赤い右目で幽霊が見える」という設定があんまり必要ない
 風に見えるんですが、いっそ普通のミステリじゃなくて現代
 ファンタジーにしちゃえばいいのに。…そうなってくのかな?
 表紙が素晴らしいんですが、見た瞬間Dグレのティキかと思った。



深泥丘奇談」 綾辻 行人
 さすがの実力派。
 これ程にバックボーンを見せないまま書いたらそこらの作家じゃ
 大変空虚でやっすい和風ファンタジーになってしまうのに、
 全くそう思わせずに作中の空気をばっちり作ってくれます。
 連作集で謎だらけでどの章でもクライマックスでぶった切る
 形で、最後まで何一つ解決してないしそもそも何が解決したら
 いいのかも分からない「不可思議のみ」で出来た小説。
 主人公の得意技は「…、のような気がする」です。
 でも各キャラは誰もが一筋縄ではいかない不思議系で魅力的。
 全く秘密も種明かしもされないのに読後にもやもや感を残さない。
 雰囲気漫画を許せるor楽しめる人にはお勧め。
 ダメな人は投げ捨てそうですが。
 京極ネタはにやりとします。


傷物語」 西尾 維新
 既刊の「化物語」の前段階の核的なストーリー。
 「化物語」は青春・学園・怪異・ドタバタ色の強い話でしたが、
 今作はもちょっとシリアスハードちっくなストーリーです。
 前作で残った疑問を解く感じなので、「化物語」から読むべき。
 これだけ読んでもイケルのかは何とも言い難いです個人的には。
 この講談社BOXシリーズ特有のサブカル的というかある一方の
 人達にはとってもわかり易く面白いノリは健在でした。
 講談社BOXはオタクとしてはまぁ避けられないかな、と手に取る
 んですがけれど、如何せん立ち読みがしづらい。
 買っちゃうと大事にできそうだけど、やっぱパラっと捲りたいな。




 今回の装丁買い…ていうかやっぱり目についた。
 
百瀬、こっちを向いて」  中田 永一
 ↑分かりづらいですが真っ白の表紙の恋愛小説集。
 眩いばかりの初恋話の表題作は男子は誰もが通る路…なのかな。
 恋も女の子も次元を隔てたみたいに実感のない存在で自分に
 降りかかるなんて思えない、という思春期初期の男の子の心情が
 これでもかと描写されている。全体的に漂う劣等感が何とも
 苛立たせるような微笑ませるような、そんなむず痒いお話でした。
 恋愛小説はもっとメンタルが爛れてる方がいい。
 描写が爛れてると鬱陶しいのですが。
 極太の帯をついつい捲ってしまいますが仕掛けはないです。