「廃墟チェルノブイリ」  中筋 純
 チェルノブイリって22年前だったのか…から始まりました。

 長い気もしましたが、写真の荒廃ぶりからはたった22年でこうなるのか、
 になりました。敢えて崩したわけでもないのに、人の手が一切入らないと
 20年でまるでバイオハザードの世界。
 フィクションかってくらいです、放置された人形とかコワイ。
 文章はほとんどなく、説教くさい説明もない。
 けどインバクト抜群の写真たちです。




 「ライオンの冬」  沢木 冬吾
 冬山で起きる国家的陰謀が凝縮された攻防。
 旧陸軍所属・現山じじぃたる主人公とその悪友がじじぃとは思えない活躍で
 現役フィリピン軍人やプロの裏の世界の住人を圧倒するのはすかっとします。
 一応フィリピン側は味方なのでさすがにじじぃ二人のみで対峙するのでは
 ないけど。
 前置き的平凡な日々の山中での暮らし方もこの本の魅力です。
 水道もガスも自給自足。ほんのちょっとなら体験したいと思わせる書き方です。
 手にとったのは元・陸軍狙撃手って帯だったから。
 偽りなく、後半には互いに狙撃手同士の駆け引きが読めます。




 「ブラック・ジャック・キッド」  久保寺健彦
 ブラックジャックに憧れ過ぎて行動が変な事になってる主人公。
 子供心の憧憬は崇拝か自己同一化かどちらかに走る。その典型。
 黒い服やしゃべり方という形だけに留まらず、人を救う気持ちと
 小さい動物の解剖への好奇心なんかの危ういところまで真似る
 主人公が成長しながらもやっぱり子供心の憧憬を捨てられず、
 当然に周りから浮いてしまう様すらも明るいタッチで描かれてて、著者の個性がよく出てます。


 
装丁買いでもあります。かもめ食堂を思わせる写真じゃないですか。
  
 「カルトローレ」  長野まゆみ
 相変わらず別次元の世界をもった作家様です。
 一時期は例に漏れずハマりました。「新世界」シリーズよりも
 「白昼堂々」シリーズよりも一冊もののがずっと好みでした。
 賢治先生とか夏至祭とか耳猫風新社とか。所謂初期モノ。
 この頃の作風が大好きで、入り込む余地のない自己完結された
 少年達の世界を垣間見る手の届かない眩しいモノとしての世界が
 とてもお気に入りだった覚えがあります。
 そして「じ」は決してつかわず「ぢ」と表記するなどのこだわりも
 長野まゆみ先生を作家買いに加えた一因でもありました。
 ちまちま出てくる小物も目をひかれる言葉の羅列で…。
 そういうのに気をとられて肝心のストーリーが食われてる作品も
 いくつかあったかと思います。特に短編集の中では。
 今回はいつもよりは文間じゃなくちゃんと文章を読ませる本に
 なってますがでもやはり不思議ちゃんな設定と成り立たない会話に
 「ああ、これこれ」と苦笑を覚えつつ読み込んでいきます。