アイルランド民話紀行」  松島 まり乃
  集英社新書      735円




 勢いでアイルランド2冊目こちらは政治云々や民俗学的見地とかはない。
 お国柄多少は触れますが、あくまで紀行なので著者がアイルランド
 訪ねたアーティスト達メイン。主に語り部さんがプロアマ問わず紹介
 されてます。


 あちらの所謂一般人の最もポピュラーな人間性がわかる感じです。
 物語を語るという行為・伝統がいかなるものか、が一冊通しての主題
 ですが全く堅苦しい文体ではなく、口語調。


 大人同士でお酒片手に誰かのリビングで夜更けまで時には歌いながら陽気に
 お喋り。そこには妖精や神話の英雄があたかも事実かのように登場する。
 こういう光景は非常に憧れますがやはり衰退しつつあるようです。
 子供への語り聞かせも同様で、今ではアイルランド首都・ダブリンの若者は
 ロンドンやニューヨークと変わらない感覚なんでしょう。
 部外者の身勝手な言い分としてはもったいないですね、やはり。
 本人達にとっちゃあ余計なお世話かもしれないし、自分がそこに生まれても
 テレビやネットに染まるのかもしれないけど、それでも口承という、一度
 失われたら復刻出来ないものなのだから、と懸命に次代へ繋げようとする
 人達を応援したくなる。自分が決して持ち得ないものだから余計に。



 アイルランドの各地方を結構まんべんなく回っているので簡単な名所を知る
 事もできます。
 ただ、妖精はちょっとでほとんど神話語り。