「私の結婚に関する予言38」  吉川 英梨
 エール卒業のエリート看護士。
 この主人公の初期設定自体がもはや普通ではないですが、物語の中では
 まずまず普通に暮らしてました、な語り口にヒきます。
 まぁ、よくもまぁこんなトンデモ展開だけで延々続けたな、と感心します。
 企業の買収戦争にスパイに拉致に北の工作員。このキーワード達にこれで
 もか!と一目惚れ・ファムファタール・ラブを絡めまくったラブコメ
 主人公が29歳という部分が特色でしょう。対応もそれなりに大人ですので
 少女マンガ的なかる〜いノリと流され主人公のシンデレラストーリー、には
 なりませんので表紙で敬遠した方には「そうでもないよ」と言えます。
 けどトンデモはトンデモなので、その中でむしろ理屈っぽくグローバル
 な使命感を持つ主人公がウザったく思うこともあるのでご注意。



 「四畳半神話大系」  森見 登美彦 
 まず設定に負けた。
 4編からなる同じ設定のパラレルもの。
 出だしは同じながら主人公の選択によって変わるストーリー展開はゲーム
 好きな人にはとてもウケるんじゃないでしょうか。
 ちなみに分岐点は「サークル選び」目指すは「薔薇色の学生生活」
 独立したパラレルとしか思えなかったのが最後にちまりとオチがつく。
 京大生物語なのはもうこの人のアイデンティティとして、楽しめました。
 文庫版出たので文体で避けてる人もちらっと読んでほしいです。
 あ、「夜は短し〜」のコミック出ましたね。超乙女でした。



人類は衰退しました」  田中 ロミオ
 ラノベとしては癖の少ない文体だと思います。
 3巻まで出てから読んだのですが、ファンタジーSF+αなシリーズ。
 衰退した人間の変わりに台頭したお菓子好きな妖精と超脱力な主人公の
 ほのぼのパニックストーリーってところでしょうか。
 妖精が様々にユニークで特に妖精の持つお道具の数々もどこかで見た事
 ありながらも許せちゃう雰囲気を持ってます。
 文芸ネタやSFネタなども満載でまさにゆる系ラノベ
 さすがにその道では有名なシナリオライターさんだなぁ、と。




 今回の装丁買いでもあります。
 「とける、とろける」  唯川 恵
 女性作家による女性の為の官能小説。
 女の書く男女のエロは実はあまり読まないかも。もちろんセックスのない
 小説をわざと選んでんじゃないですが少ないじゃないですか、わざわざ
 官能小説と銘を打つ「その為に書かれた」小説って。
 (男女のじゃなければ読んでんのかと言われれば読んでますが腐るほど)
 男性作家のを幾つか読んだ事もありますが、やはり違うといえますね。
 視点がどちらかが重要なのではなく、セックスの過程をどう捉えてるか
 イく瞬間じゃなくそれまでの数秒の感覚とか頭の中の冷静さとか、そう
 いうものに対する自分の経験を見直すいい機会になりそうな小説。
 でもこの本の中の短編はどれも禁断というスパイスが加味されているので、
 くれぐれも現在幸福円満な恋愛とセックスをしている方は憧れないよう。