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「妖精のアイルランド 取り替え子の文学史」 下楠 昌哉
平凡社新書 798円
妖精の島と呼ばれるアイルランドのフェアリーなイメージを打ち崩しつつ、
アイルランド独自の文化形成を好意的に解説してます。
しょっぱなでアイリッシュ=ケルトの先入観を崩す方面へ持ってくるが、だからと
いってアイリッシュの民俗性を否定するのではない。
むしろ章ごとに著名な文学人たちをフォーカスしながら伝えてるのはアイルランドが
どれだけ影響力を持った風土かを熱心に説いてる、気がする。
妖精の既存イメージをしっかり塗り替えてくれます。
可愛らしいフェアリーではなく、表象不可能なものや事態への、現実への結び付けや
共同体の中の共通な認識や解決手段として「妖精」が用いられたってのはとても
理解できる話です。日本の妖怪や鬼と同じですよね。
口承民話の例はあまりないのでそういうのは別の本に求めた方がいいです。
有名なイェイツやハイド、ブラム・ストーカーにオスカー・ワイルドに小泉八雲に
ついてはとっても丁寧に生い立ちやエピソードを載せていて、説得力を感じます。
イェイツを別にすれば一番印象的なのは「ドラキュラ」の解説。
これは一読の価値あります。
アイルランドの本を読み始めた動機が死にたくなる程申し訳ない…。
でも魅力ある国です。