「石田衣良の白黒つけます」  石田 衣良
 こういうノリの本、数年前にも流行りませんでしたっけ?
 コレ系はあまり読まないのですが作家買い石田衣良なので
 手が伸びました。率直に言えば普通です。
 読んでも読まなくてもって感じ。
 石田衣良ならでは!感は薄い。白黒つけますといいつつも
 ケース・バイ・ケースじゃん?とか個々の良心情熱のままに
 みたいな結論が多い気がするのは気のせい?



 「愛しの座敷わらし」  荻原 浩
 座敷わらしを招きたくなる一冊。
 もともと座敷童子と書くくらいだからあまり怖い印象のない
 妖怪ですが、よくあると言ってしまえばそれまでの、でも
 当人達には重く生活に影を落とす出来事の積み重なる家庭
 の中で顔出す座敷わらしに思わず微笑まされます。
 舞台となる家庭が「うだつの上がらない父」「友達がいな
 い娘」「虚弱で我侭な息子」「認知症気味の祖母」という
 聞いた事のあるような、リアルな設定に読み手まで沈み
 そうですが、引越し先の田舎の家で座敷わらしと共に、
 何とかかんとか家の中を立て直す柔らかいストーリーです。



 「ジーン・ワルツ」  海堂 尊
 5人の悩める妊婦のお話。
 悩むって言っても山本文緒の書く女性のような悩み方じゃない。
 テーマが不妊とか高齢出産とか代理母などなので気軽にやっぱ
 前向きにネ!というノリには当然なりませんが。
 悩み方が大変湿気を感じます。と同時に切れ者産婦人科医の
 女医がズバズバ物を言う気質でバランスが取れている。
 医療ミステリだけあって想像しづらい単語が多いのですが
 それはチーム・バチスタシリーズを読んでる方ならお手の
 もので読み飛ばしてしまえる。
 重くて答えの出しにくいテーマなので一概に人に勧めては
 いませんが、キャラクターの個性も強くて活字好きな人なら
 読んでみてもいいと思います。なんて言うまでもなく売れ筋。



 「家日和」  奥田 英朗
 これお勧め!
 何という後味の良さ。
 一般的な他者から見ての幸福に捕われない本人だけが然りと
 感じられる幸福とそこに気付くまでの日常生活の変化や契機。
 一つのテーマだけど6編あったら6編とも違うカタチの幸せを
 無理なく描いてます。そして1編たりともハズレがない。
 四十路間近の男どものたまり場が出来るまでとその居心地。
 報われないと信じていた毎日に潜んでた愛情。
 俺って実は主夫向き?と気付き始める倒産会社の社員。
 ロハスに対するお父さんのリアルな認識。
 など、どれもさっくり読める割に確かな存在感を残します。