「鼓笛隊の襲来」 三崎 亜紀
 なかなかエキセントリックな短編集。
 短編なのにずいぶん思い切った設定を組んでいるので
 世界観を掴むのに想像力がかなり必要。
 ファンタジーと捕らえればいいんだけど、細かな描写は
 リアルに則してるのでそこを楽しめれば勝ち?
 期待していた方向ではないけど覆面のお話に代表される
 読み手を惑わす叙述は好きです。
 不可解な世界・見えない恐怖・覆される常識、そんな
 ものが確かにあるのに暗さやオドロオドロシサを感じ
 させない文体で、むしろほやっと感動する場面もあった。



 「Love Letter」  アンソロジー
 ラブレターを根底テーマに若者に人気のある作家陣の短編集。
 切ないちょっと大人っぽい恋愛を書きなれた人ばかり。
 の割りにはパンチが弱いのはテーマの弱さかもしれないです。
 石田衣良は『美丘』へのラストレターです。これはセカチュー
 を彷彿とさせる。他もやや涙をさそう「切恋」ばかりかな。
 2作目の「ラブレターなんてもらわない人生」もタイトル
 に比べれば小技がきいてない。
 こういうアンソロジーならもっと奇抜なテーマを取り上げて
 もらうと新たな発見があっていいのだけどな。



 「夢をかなえるゾウ」  水野 敬也
 今更ですが、これ。
 読んだのは実はもっと前でした。こんなに人気が続くとは
 思ってなかった一作です。軽いノリの関西弁のやり取りが
 コミカルだし時事ネタ含んでるし果てしなく読みやすい。
 普段本を読まない人も面白く感じると確信できるのだけど
 普段本を読まない人はこんな単行本は書店でもスルーですよね。
 でも特筆すべきは主人公の忍耐強さと順応力。
 自分だったら逃げます、ゾウの神様のいる現実から。