「民権と憲法」  牧原 憲夫
  岩波書店     777円


 
 自由民権運動から大日本帝国憲法成立までの大系本。
 入門編というにはちょっと敷居が高い……?
 大筋を知った上で読む人が前提な気がします。
 第一章の入りからし竹橋事件だし。




 自由民権運動は一口に民権を求める運動という訳ではなく
 それこそ目指すモノもカタチも目指し方も千差万別ぶりが
 幕末の比じゃないと思います。
 幕末も倒幕派も幕府擁護派も「日本を西洋の侵略から護る」という
 目標は一致しつつその手法が異なっていたからあれだけの内乱的な
 一時代を形成していますが、民権運動は民権派からして多種多様過ぎる
 上に個々人でもどんどん思想傾倒が変わっていくのでなかなか整理が
 できないです。私だけ?



 明治14年政変まではともかくそれ以後が分かり辛い。
 国会成立後は更に増します。特に第二次帝国議会以降とかさ。
 みんなあっちこっち移動し過ぎだよ。共闘したり分裂したり…。
 話が逸れました。本は憲法成立までなので、第1回衆議院議員選挙
 までやったりはしません。時間軸で言うととても短い。
 それに民権派の内部についてもほっとんど語られません。
 何たって馬場の名前が一回しか出てこないんですよ!ありえない!



 政府側は結構ちゃんと書かれてます。伊藤なんかは丁寧。
 決して政府贔屓という書き方ではないです。でも憲法を成立させる
 為の努力はきっちり評価されてるのが嬉しい。苦労してんだな、伊藤。
 それに地方行政。これくらいが本の半分を占めます。



 残りの半分は何にページが割かれてるのかと言うと民衆と天皇です。
 民衆への民権思考の浸透とか影響、天皇への認識・意識などですね。


 後半はほっとんどコレ。で民権運動メインの本とは思えなくなって
 くるのですが、やはり著者が後書きで書いている通り、民権運動は
 幕末の倒幕運動と違ってその収束が妥協と衰退なので難しいようです。
 そこがまた魅力的。民衆間と民衆の近代的権利を求めた知識人達
 との間の断裂は政府対知識人のそれよりずっと深い。この悲劇。
 その分遣り切れなさと次世代(議会)でのアレコレへの興味が尽きません。




 まだまだ知らない事いっぱいですよ、民権。
 常に空回り感と背中合わせ名民権家本をもっと読みたいなぁ。