「MY ONLY SON」  クリストファー・J・ガンビーノ
 アーティストハウス  1688円



 NYのコーザノストラ・ガンビーノファミリーボスの一人息子。
 この著者紹介は強烈でした。なんて魅力的な…!


 イタリアン・マフィア本に2度とも出てきた大ファミリーだけど
 こちらがメインの本を読めるとは思ってなかったです。
 でもこれは研究本ではなく、ガンビーノのジュニアの自伝小説。


 かなり事実を暴露している、と後書きにもありますがあくまで
 「ボスの息子であった自分の体験を元に創作した小説」なので
 「ガンビーノ」という名前は出て来ないんです。残念。
 父親の職業を知らされずに育てられた一人息子のヴィニーが、
 成長につれて普通ではない自分の境遇に気付き葛藤する。
 非情で非道な世界を厭いながらも結局はマフィアの人間として
 生きる道しか選べない主人公なのだけど、一方では持っている
 金と権力を使いまくって結構ノリノリでマフィアの幹部的な
 役割をこなしてる中盤が一番楽しかった。


 ボスであり横暴な家長であった父を憎んでるのだけど、同時に
 恐怖を抱いてしまい逆らえない。だけど終盤に至って一つの
 切っ掛けから父への裏切りを決意する……という流れは本作で
 一貫して描かれている父への憎悪からみれば自然です。
 けれど(にわか)マフィアファンとしてはもう少しヴィニーの
 父親にカリスマ性があって、ヴィニーも恐れと憎しみ一辺倒
 ではなく畏怖の念を抱いて欲しかったな。



 翻訳モノなのでそれらしい文章です。ベッドシーンがそれほど
 濃くないものの必要性をあまり感じない場面に入ってきたり
 直訳なのかと思わせる不自然な日本語だったり。
 ガンビーノ関係を期待すると当てが外れます。


 ところどころに出てくる食事シーンが何気に良かった。
 刑務所で出された「白パンに厚切りのボローニャ・ソーセージ
 とチーズ」のサンドイッチが何故か非常に気になりました。