「攘夷と護憲 ―幕末が教えてくれた日本人の大欠陥」   井沢元彦
   徳間書店    599円



 護憲というか攘夷が9割の研究本…解説本?


 攘夷ってものを志士活動からではなく、学問として解説し、
 幕府と各学派との関係を結構詳しく語っている。


 幕末に限らず成り立ちというか日本への取り入れ時期から
 丹念に述べているので分かり易い。けど途中までは「これ
 幕末本?」となるので幕末オンリーな人は飽きるかも。


 人物的にも志士がスルーなので派手さは皆無。
 高杉も桂も大久保も期待しちゃだめです。
 強いていうなら勝つながりで坂本かなぁ。



 日本の防衛策としての鎖国は一定条件の元では有効で、決して
 偏狭な政策ではなかったという事の擁護もしている。




 が、一方では黒船から明治政府樹立までの約15年の動乱を
 「空回り」「遠回り」呼ばわりするのは如何かと。
 この幕末期間が遠回りなのが前提で「何故こんな遠回りをして
 しまったのか?」という事を懇切丁寧に解明してくれるんだけど
 この15年を愛してるこっちからしてみると釈然としない。


 ま、そこんとこを敢えて堪えれば、明快でタイトル程敷居の高い
 本じゃなく、朱子学の起こりや国学の絡みがさくっと整理できる。


 幕末を人物史のみではなく捕えたい人の入門書にどうぞ。