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「幕末遊撃隊」 池波 正太郎
集英社文庫 486円
旧幕軍として戊辰戦争を箱館戦まで戦った伊庭八郎が主人公。
「隻腕の美剣士」という枕詞をよく使われてますがこれには多々の証言が
あるようで、当時描かれた伊庭の錦絵も人気が高かったとか。
顔良し、頭良し、腕良し、家柄良しという人も羨むお方ですが、唯一つ
運だけは悪かった。(しかも強烈に)
まぁ、この辺りは史実なのでどの本を読んでも「小田原藩寝返り」「左腕切断」
「乗船座礁」などの不運は書かれているので変わりない。
けれどこの作中ではとにかく完璧な人間に仕立て上げられてる感がある。
結核持ち、という設定ゆえか物語の頭から終わりまで異様に達観してます。
薩長に対しても頭っからの否定ではないし、恨みつらみという感情もない。
やけに傍観者的な意見を持ってます。なので、負け戦が続いていく状況下でも
全く見苦しい取り乱し方をしません。実際温雅な性質の人ではあったらしいが
「格好いいけど格好良すぎる」の典型になってるかも。
そんな中で話の所々に出てくる愛妓・小稲との「入れぼくろ」のエピソードは
伊庭の人間らしい情や機微を効果的に出していて、更に好感度アップ。
惜しむらくは「〜かぇ」というよく見かける彼の喋り方は全く見受けられない事。
(あれ大好きなんですが!)
本山や人見の出番がやけに少なく、土方の出番もほぼなしなのは何故?