「アームストロング砲」  司馬 遼太郎
   講談社文庫        660円



 幕末の脇役達の影の偉業を描いた短編集。
 9編入っており、薩摩も新撰組博徒も何でもアリ。


 ざっと見て有名なのはやはり壬生話の土方・松原忠治と1編を
 陣取っている沖田、そして表題の佐賀藩主・鍋島閑叟でしょう。


 「アームストロング砲」は戊辰戦争で切り札扱いされた佐賀藩
 アームストロング砲について、取り入れた切っ掛けや製法、
 閑叟の科学への姿勢などに詳しい。
 武器専門書や研究書ではないのに、よくまぁこんなにしっかりと
 アームストロング砲に焦点を当てたものだと感心する。




 さすが司馬先生。やっぱり第一人者。
 佐賀藩は幕末に武器製造に置いては第一級の藩だったというのに
 統幕活動には鳥羽・伏見後に、しかも土佐藩よりも協力が薄く、
 後から思えば全く持って勿体無いとしか言えない。
 それでも武力ではなく外交や法制で明治政府に参議を散々排出
 したのだからやっぱり尊敬だけど!



 他の話も脱線的逸話という感があって、幕末好きなら絶対楽しい。
 幕末の薩摩藩は個人的に専門ではないのだけど、「大なり
 小なり化け物」と表現される程の自爆的思想には驚いた。
 ってこれ小説だった…。



 本当に司馬先生の本は史実と混同してしまうし、だからこそ
 何度でもどの作品でも読む甲斐がある。