「土方歳三の鬼謀3」  柘植久慶
   ハルキ文庫     700円



 もしもシリーズ第3弾。
 函館戦で勝つには?の土方本。


 3作目なのでこのシリーズのコツも掴めて、やや馬鹿げた
 進行にも好き嫌いの激しい人物設定にもすんなり入っていけた。


 今回の贔屓筆頭は星ジュン。
 彼の事は元々かなり好きなので個人的にはオッケー。
 蝦夷では上陸から江差まで額兵隊は土方指揮下にあったので
 守衛新撰組と合わせておいしい役どころだった。
 対極的に戦況を見る見識がありつつ、若者らしい血気盛んな
 サマは理想的な星ジュンです。英語も堪能だし、男前!




 そして前作から引き続きブリュネ、シュネルが大活躍。
 土方の専属指南役みたいになってるが。



 土方の函館戦争までいく本の中では榎本は思いっきり土方
 を評価した気の合う話の分かる上司か世の中舐めてる楽観的な
 独り善がりな総裁の両極端な二者択一な気がする。


 今回は後者なので扱いがヒドい。
 ついでにタロさんも微妙な位置に…。土方達との仲裁に入って
 たら榎本側と位置付けられてしまった、みたいな。
 大鳥もヒドい。これは結構多い傾向だけどね。



 それと今回は土方自身にも疑問が。
 特に後半の榎本達への態度というか仕打ちは土方らしくない。
 今回目玉の宮古湾海戦、つまりアボルダージュに成功する
 過程はまぁそこそこ楽しめるのだけど、その後の凱旋将軍
 である事を鼻にかけて、榎本に圧力掛けて迫るような行動
 なんて土方じゃない!!小声で「斬りますよ!」と脅しを
 かけるなんて副長じゃない!!



 後味が悪かったなぁ。三部作の最終なのに…。
 土方や戦術的な想像を楽しむなら第2弾の会津戦が一番。
 三弾では星ジュンと島田の指揮ぶり、戦いぶりや伊庭辺りを
 楽しんでおいた方がいい。


 なにげ〜に市ィが登場してたりしてちょっと得した気分。



 こういう全く夢見がちな歴史捏造はたまには面白い。
 もう書かないだろうな、と思うけど他の作家さんでもいいから
 また誰か出版してくれないかなぁ。


 今度は長州側で。でもそれだと禁門の変くらいしかネタがない。
 功山寺挙兵も四境戦争も成功してるし…、やっぱ無理かぁ。