「長州暴走」      古川 薫
KKベストセラーズ     1260円



    
 このタイトル。
 いや、「暴走」「暴発」がオフィシャルな藩ではあるけど。
 それでもタイトルに「長州暴走」って…、大胆な。




 本編は兵隊びいきな幕末長州動向ガイド。
 古川先生の本なので、小説ではないのに物語を
 読んでるような気になる。
 著者が思きし感情的な見解だけど『長州ラブ!』ゆえなのが
 見てとれる為、同じ長州好きなら全然アリだった。



 章毎に贔屓している人物がちがうので高杉や久坂への目が
 優しかったり厳しかったり。
 総じて奇兵隊の名もなき隊員に同情的。そして詳しい。


 四境戦争や戊辰戦争での参加者・死傷者等を数字で示してくれる。
 こういうのは自分では調べづらいのでとっても有難い。


 ってゆーか、戊辰の死傷率30%って…。
 勝ち戦なのに、何この高確率!
 主に北越で頑張った奇兵隊なので長岡の河井とやりあったのですが、
 河井も好きだ!どちらに旗振りゃいいのか…!



 さすがに長年長州派な方だけあって、かなりマイナーな人物の名も
 ばっちり登場しているのでそういう面で知識をちょっと深めてみる
 にはもってこいの本ですね。


 ただ、同じエピソードを2、3度繰り返してあるのには苦笑。
 そこはまぁご愛嬌という事で。



 でも高杉贔屓としてはたまに出てくる「これは高杉の功と言われて
 いるが実際は〜…」のような記述はちょいちょい引っ掛かる。
 ただし他の場面では「これぞ彼だけの為せたワザ!」という感じの
 誉め方もしているのでもう、誉めるか貶すかどっちかにしろよ!と
 言いたくなっちゃう瞬間もありました。



 最後まで引っ掛かったのはそこはかとなく漂う「久坂の愚挙」チック
 な文。いやそこまでハッキリ書かれてはいないけど、久坂=深慮の
 イメージの人には反感買いそう。