土方歳三の鬼謀」  柘植 久慶
  ハルキ文庫     667円
 鳥羽・伏見戦で佐幕側が勝利してたら…?という「もしも本」
 勝利していたら、というよりは勝利するには、のが正解かな。
 タイトル通り土方の活躍のみで勝利に導いてしまおうとする
 ので、無理がかなりあって思っていた程の説得力もないし
 話の拡がりもない。
 敵も味方も「あの男ならやりかねん」と異様に土方への評価が高い。
 そういうえこひいきはファンには嬉しいけどね。
 物語というよりは土方の御所占拠という一点のみに絞って、その
 ルートはタイミングは?と「孫子」なんかを引き合いに出しつつ
 何枚もの地図まで載せながら戦術を煮詰める様子を説明している。
 局地的に過ぎる突飛な構想ではあるけど、細々した会話を楽しんで
 割り切りながら読んでくのが正解。
 誰もの意表を突く「鬼謀」とはとても言えない単純な戦略だけどね…。
 ところで上手く作戦勝ちしたはいいけど、結局一戦もしないと云う
 肩透かしをくらったのは意外だった。
 そんなに戦術にこだわるならもっとその方面で展開してくべき。
 土方以外はあまりいいとこ取りな方はいない。
 中でも大久保と岩倉はかなり情けない役回り。
 この本最大の魅力は「桂の振りをする土方」!!
 とりあえず笑えた。