梅の花咲く 決断の人・高杉晋作」  田中 秀征
     講談社文庫       649円   




 主人公・当然高杉晋作
 数ある見せ場の中から、功山寺決起前後にフォーカス。


 いきなり俗論党に終われ博多へ逃亡に出るけれど、直前の
 雅の心情がとても「普通」で女ならそうだろうなと納得。
 その後も高杉の人生に欠かせない女性が3人ともばっちり
 登場してひそやかながら華となってくれている。


 この人の女性関係・遊郭遊びは派手だがとてもウマい。
 マイナスイメージにならず逆に「粋人」の称号を得ている。
 雅もおうのも望東尼もベタ惚れ。望東尼はベタ誉めも。


 そして狂介…!
 こういう必死こいて高杉に認められたがる狂介は好きだ。
 功山寺の回天義挙の件を一生の誤算にしていた彼を思えば
 これくらい執着していて当然、……かな?
 俊輔に関しては相変わらず人生最高の英断ぶり。



 著者はサブタイトルになっている高杉の決断力は勿論だけど、
 それ以上に危機回避能力と時を読み取る先見を評価してるようだ。
 やや贔屓過ぎるきらいもあるけど、こっちだって高杉ファンなの
 だから喜びこそすれウザくなんて思わない。



 特徴としては「友情深い」点がある。
 3人党の絆は勿論のこと、聞多とはそれ以上に意気投合。
 胸襟開いて語り合い、あの高杉に「艱難辛苦を朋にできる」
 と言わせてしまう仲の良さ。聞多も少しも疑わずに全力で
 高杉を手助けする。…赤根とは雲泥の差の扱いだ!



 また、自分に与えられた温情を決して忘れず、回天で以って恩返しを
 する決意をその都度深めてゆく姿は真摯で誠実で情が深い。
 そういう情を大事にする性格が最前面に押し出された高杉なので
 他の本より破天荒ぶりはナリを潜めるがこれはこれであり。