物語 五稜郭悲話」  新人物往来社




 箱舘戦・旧幕軍幹部にスポットを当てる。
 1人1章割り当てられているので個人についてかなり
 詳細まで掘り下げられてて幕末通でも楽しめる。


 惜しむらくは情報がやや古いこと。
 昭和36年発行なので仕方ないけれど、もったいない。



 ラインナップはみんな一度は聞いたことがある著名人ばかり。
 榎本・土方・伊庭は無論います。人見・高松凌雲・中島三郎助も。
 後は星・ブリュネ・武田斐三郎・柳川熊吉・永井蠖伸斎・田中研造。
 星・ブリュネはともかく他は知名度的には微妙かな。




 読書前に狙っていたのは星恂太郎なのでそっから読んでみたり。
 章毎に主人公が異なるので同じ人物でも違った見方で描かれている
 のだが、それが顕著なのがこの星ジュンの章。


 降伏直前の榎本の自害未遂を「裏切られた」と感じ、その後の出世も
 変心としてしまうのだが、榎本の章では当然こちらに義がある。
 作家が違うせいかどちらも完全に独立させて読めるので問題ない。
 


 星ジュンは熱い男だ。「今日はブラックだぞ」には笑った。
 もう少し額兵隊の面々に触れてくれればもっと満足できたのにな。
 明治後は彼も結構不遇だよな。タロさんには負けるけれど。




 珍しいのは箱舘の写真家・田本研造。土方の写真を撮ったという。
 その土方の章は作家の溢れる愛が篭められ過ぎているような…。
 伊庭に関しては一言物申したい。こんな僻みっぽい伊庭は嫌だ!
 人見さん主人公というお話もあまり見ないので新鮮。
 ブリュネの章で出張る大鳥が果てしなく格好いい。でも言い過ぎ。
 長身って…!そりゃねぇよ!



 とまぁ、それぞれさっくり纏めてあってお勧め。