十一番目の志士」  司馬 遼太郎
 文春文庫     上下巻 各570円



 これまた有名な高杉系創作小説。


 主人公こそオリジナルな天堂晋助という天然入った剣客だけど
 物語の流れは史実に沿った巧妙な作りになっている。
 ていうかうっかりこれが史実じゃないかと思うくらいで、やはり
 司馬先生の世界はすごいなぁといつでも再認識。



 高杉に拾われ剣の腕を買われ刺客として暗躍する主人公。
 教法寺事件や赤根の処刑、七卿落ち後の京都潜伏などかなり
 重大事に架空の人物である晋助を活躍させてしまう大胆さ。
 上下巻だけど上巻の前半と下巻の中盤ばかり読み返す。
 だって高杉が…。



 「世に棲む日日」より天才肌のエキセントリックボーイだ。
 晋助への影響力というか支配力は凄まじい。常に扇片手にして
 そうな余裕に満ちた言動は大変好みの高杉だった。
 「女のような声できゃ、と笑う」は有名、だと思う…。




 文久3年春頃から慶応3年高杉の死までが舞台なので、晋助の
 一生を描いたというよりは高杉と偶然出逢って関わって終了まで、
 という感じ。それかどうしたとか妹はどうなったとかはスルー。
 でも桂との絡ませ方も妙に説得力あるし、赤根も登場率高い。
 ただし物凄い可哀相な役回りになっている。山県も微妙に嫌な奴。




 対して敵側である筈の新選組、とくに土方はやはり贔屓されてて
 切れ者の策士っぽく描かれてる。司馬先生ホント土方好きだよなぁ。
 幕臣の永井なんかもちらりと登場。あんま格好よくはないけれど。



 高杉ファンだけでなく土方好きでもイケると思われます。