土方歳三散華」  広瀬 仁紀
  小学館文庫    559円




 池田屋直後から箱舘まで。
 と言っても伏見以降は微妙に流されてる感がある。



 注目は青蓮院宮と容保。
 この二人がやたら仲良し、というか青連院宮が豪気。
 容保より一枚上手な宮様が素敵だ。宮様守衛のくだりも
 新撰組本であまり見かけないので目新しくっていい。




 山崎に非常に優しい土方。
 池田屋の変の論功行賞でがっちり山崎の心を鷲掴み。
 さすが副長!局内の粛清エピソードも幾つか出てくるけどどれも
 土方を冷酷にみせるものではない。むしろ隊士思いが感じられる。
 沖田、近藤との仲も理想的。近藤が土方に諸事任せている様子も
 大人の余裕が感じられる。うん、この近藤さんは格好いいな。
 土方の1歳上とは思えない。


 油小路では藤堂を切った隊士を思わず斬り捨ててしまう人情家。
 でもその後しっかり法度違反の理由付けしていたり。




 戊辰戦争以降はあまり詳しくはない。というか戦闘シーンはないので
 転戦の様子も数行で終了。ちょっと残念だ。
 榎本さんとのやり取りは江戸っ子同士という感じがする。



 どの戦に対しても終始『喧嘩』という言葉を使い通した土方はありです。
 彼ほど『喧嘩』という言葉が似合う幕末人もいないのではないかな。
 文字通り命賭けの喧嘩をやり通したラストは結構引き込まれた。