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「歳三　往きてまた」　　秋山　香乃
　　　文芸社　　　　　　　1890円




　のっけからヤラれた。
　土方贔屓の女性のバイブル。噂通り。


　新選組の面々のみならず旧幕府軍の方々も皆して
　土方に甘いというか肩入れ激しいというか。
　読んでるこっちが照れるくらいだ。



　舞台は鳥羽伏見以降。
　伏見戦が非常に詳しく書かれていて小説ではダントツ。
　鴻之台から会津戦までも微細な状況描写が嬉しい。




　そして何よりの魅力はその間に散らばる個々の人物描写。
　一々上手くて惚れ込んでしまいそうだ。




　まず秋山さんの書く斎藤は個人的には伊庭のイメージ。
　土方を「旦那」と呼び扇子を拡げる。粋人！
　伊庭も言ってくれます。「泣き顔みせておくれよ」
　…伊庭だから許せる台詞だ。感動的に昇華されてる。
　山崎は男前。被弾する辺りはとてもドラマチックだ。
　秋月登之助も軽薄なノリがいい味出してるね。



　大鳥と相馬とそれに大野が結構おいしいトコ取りしてる。
　相馬と野村に関してはもうお前らホントなんなの！？
　って言いたい親密さ。その分宮古湾が切ない。
　切ないと言えば滝田と玉置。特に玉置はマジで泣ける。




　主人公の土方はと言えば人情味あるし葛藤もしてる、
　けど土方らしい芯が常に前提にあって甘やかされつつも
　甘ったれな印象は受けない。



　至るところで美人という賛辞を頂戴してるくせに
　言動が至って乱暴という定説が思きし強調されてて
　漫画を読んでるような気分になった。






　土方の最後はきっと書き手さんは誰しも苦心するんじゃ
　ないかと思うのですがここでは立川主税が綺麗に
　まとめてくれて結構秀逸だと思います。
　もう少し安富が出てくれたら個人的にはパーフェクト。




　読み進めやすくノリやすくにやけやすい。
　秋山さんらしい本でした。