歳三からの伝言」  北原 亞以子
  講談社文庫    660円




 これは読後感の良さがかつてない。
 切ないくらいに見事な生き様だったんだなぁ、と今更実感。



 新撰組の伏見戦から蝦夷までが舞台で宇都宮から会津辺りが
 とても細かに書かれているので目新しくて嬉しい。






 大林院に終結する場面や足の負傷による会津での療養期間に
 にページが割かれてて、この辺りの知識付けも出来ちゃう。
 オリジナルの美乃という女性や新撰組隊士の蟻通勘吾と頻繁に
 絡む中で、土方の揺れや変化を上手く出てる。
 てゆーかどこまでも粋!



 そして粋と言えば伊庭ですが彼もちょこちょこっと顔を出す。
 やけに情報通なところが彼らしい。斉藤もオイシイ。






 時期が時期なので近藤とはほとんど別行動だけど、土方の中で
 の存在感は大です。近藤自刃を止めるところでは彼の
 「それでもいやだ。」
 が可愛い。台詞の端々に江戸の悪ガキの名残があったりするし
 蟻通は「勘吾」呼びだし、この本では会話文が最高。


 全体的に柔らかい物語。女性の書いた土方らしく女性にはウケる。
 読み手によっては物足りなさを覚えたり甘く感じたりするかな。
 帯つきの場合「幕末一のモテ男」との謳い文句が。
 それはちょっとやめて下さい……。







 ところで個人的には大鳥と土方の中は軍議の外では悪くないと
 信じてるのですがもしかしてマジで険悪だったのかな。
 あまり仲良い本を見かけない…。
 ここでも一方的に土方を嫌っちゃうし。
 富樫さんの本でも底辺舐めてるような役回りだし…。
 大鳥本での土方はどんな扱いなのか非常に気になるところ。





 ラストの場面の土方の手紙。
 これホントにあってもいいんじゃない?て思えた。