マイ・ディア・シンサク」  今江 祥智
    澪標(みおつくし)   1680円




 びっくりする程異色のファンタジー設定作品。
 流れは高杉の上海行あたりから主要な場面をかいつまんで語られてるが
 なにしろ視点が幼少の高杉晋作本人。


 死に面した大人の高杉があの世の水先案内人のような異国の女性と一緒に
 幼少の自分に自分の一生の要点と言える場面へ幽体離脱状態で連れて行き、
 仔高杉はそれを夢の中の出来事として目の当たりにする、というお話。




 もう、とにかく仔高杉が大人になった自分を物凄い尊敬の目で見てる。
 知らないとは言えこの自己崇拝には苦笑するが、実際にはここでの大人高杉は
 案外とうっかりさんである。そのせいか会話のテンポは軽い。
 仔高杉は他では見られない程に素直で生真面目な少年。





 中盤辺りでノリに慣れてしまえば楽しめるけど、プロローグで大人高杉が幽体離脱
 する場面や前半部の幼少高杉と祖父母のシーンは長過ぎて飽きる。
 この祖父母、仔高杉が夢から覚める度に出てくる。出張り過ぎじゃない?



 設定を聞いただけでも「なんだそりゃ?」と思いつつ手にとらずにはいられない。
 何をどうしたらこんな設定で高杉を語ろうと思うのか疑問だが、そこはぬかりなく
 しっかり(?)アトガキで触れてあった。




 ただし、最後の仔高杉のオチでは「意味ないじゃん!」と突っ込む事間違いなし。
 そしてもう一つ。ナイス装丁、すごい好き。