「犬養 毅」   時任 英人
  山陽新聞社    1575円




 犬養研究に定評ある先生の「犬養ってこんな人」本。
 固い表現を一切省いて、何回な解説を割愛してあり、序文にある
 通り若い人にも犬養の魅力を分かってもらう為の布教本っぽい。


 あーもー、犬養男前過ぎ!情に脆いのもきっつい毒舌も魅力!
 古島の尽くしっぷり、尾崎への世話焼き、孫文への私的友情・
 書と剣への入れ込み、という各テーマだけで読まねば!という
 気にさせる構成であり中身も期待を裏切らない。



 古島はオフィシャルで自認他認の犬養信奉者。
 よくぞここまで、と思わせる古島の男気も惚れ惚れする。
 著者も本の中で何度も言っているがここまで1人の人間の影に
 徹して粉骨砕身、尽力しまくるなんてちょっと珍しい。


 古島の存在は犬養にとっても稀有で貴重だったらいい。
 実質的なだけじゃなくて、心情的にもプライベートでも。
 そして此処まで惚れ抜かせる犬養に改めて脱帽です。
 まるで小説のキャラ設定のようだ。



 尾崎についてはここから入るとイメージが可哀相かも。
 尾崎側からすると「双肩並び立つ朋友」でも犬養側からだと
 「手間の掛かる弟分」らしいのだけど、ホントのところどうだろう?


 尾崎好きな人の話からするとかなり快活で憎めない人柄の西洋通。
 ま、確かに西洋知識には犬養よりリードしてたんじゃないだろうか。
 洋行歴がまず違うし、2代目の奥さんハーフだし。
 でも植木と違って犬養は語学もばっちりだったし、素養は漢学でも
 知識的にはちゃんと学んだ上で自分で取捨選択した結果だもんな。
 個人的には犬養・尾崎は世話を焼く焼かれる関係よりも尾崎の言う
 ような悪友チックな関係だったと思いたいところ。




 この本、サブタイトルが「その魅力と実像」だけあって、「魅力」は
 かなり伝わってくると思う。ハマる。「実像」かどうかは分からない
 けど著者がやはり定評ある方なのでやや身贔屓はあっても捏造はったり
 はないだろうから、やっぱり実像が魅力的だんだろう。



 幕末明治からちょーっと進んで「犬養・尾崎・原・松田・岡崎・星」
 辺りに触れ初めた人には是非読んで、そして犬養派になって欲しい。