「政界五十年古島一雄回顧録」    鷲尾 義直
   三元社        260円(昭和26年定価)




 その名の通りジャーナリスト出身の政治家・古島一雄の回顧録


 鷲尾にインタビューされてる形式で、古島一人称の口語体。
 旧仮名混じりでここまですんなり読める本は初めて。
 古島の語り口にハマる!
 勝海舟を思わせる軽妙な語り。


 歴史的に重大な事件も当事者で取材時には本人も大御所の古島が
 語ると「近所の噂話」「知人の身の上話」なのが面白い。



 そして中身はと言えば、一言で言うと「犬養礼賛」
 自他共に認める犬養の影なのだから当然なのかもしれないが。
 奸計を廻らす奴、金に汚い奴、私欲保身に走る奴を毛嫌いした
 廉潔で英明で皮肉屋の毒舌家。うーん魅力的だ。



 伝記風じゃなく犬養と知り合った辺りから後の政界のあれこれを
 「あの時実はこんな事が…」「あの事件の裏ではこの人達の暗躍
 が…」という裏話をいい感じのノリで話してくれる。
 そのほとんどが犬養の絡んだもので、その先見をこれでもかと
 誉めまくっているのだけど、いやらしさはないのでオッケー。


 ただし犬養の敵、というより古島が「犬養にとって害アリ」と
 見なした相手へは何気に評価がヒドい。
 あと、尾崎も微妙に嫌いだったのかな。
 犬養と仲良いから?




 三浦も頭山も頻繁に登場。見る人語る人によってがらりと評価の
 変わってしまう2人なので他の本と比べるといいかもしんない。
 布引丸事件も外交調査会も古島の目から見るとまた一味変わって
 知り応えがあるし、好意的な見方だから読んでて安心できます。



 古島曰く、彼の若い頃の潔白な政治家達は策を廻らそうが立場を
 違えようがとにかく「気持ちのよい連中」だという。
 そういう古島も筆者に言わせると「気持ちのよい翁」だったようだ。




 ちなみに260円定価でも今なら古本で安くて2、3000円。
 アマゾンでは7000円越えのユーズドがあります…。